2019年2月11日

月刊誌『Wedge』に弊社代表取締役 CEO 岸伸久のインタビューが掲載されました。

~日本創生の実現~

 

 

 

海外の食通たちに日本の食や文化を伝える 日本の食材を使った料理体験で魅力を発信

世界無形文化遺産でもある「和食」は、日本が誇るインバウンド向けコンテンツの1つ。来る2020年のオリンピック/パラリンピックや2025年の大阪万博というビッグイベントも後押しし、和食のみならず日本文化に関心を示す海外の人はますます増えることが予想される。

 

 とくに、海外の食通たち(フーディーズ)は好奇心が強く、よい食を求めて現地へ赴くほどアクティブだ。未知の食体験を得るためにはお金を惜しまない、文化的な富裕層が多いのが特徴的だ。彼らは、単に各国の食を楽しむだけにとどまらず、旅行を通じて、食にまつわる歴史や文化、自国と異なる価値観への探求心を満たしたいのだ。

 

しかし、日本には、そんな外国人旅行客を満足させる土壌が整っていない。彼らは、東京や大阪などの大都市にとどまらず、地方でとれた新鮮な食材を味わいたいと思っているが、生産者や自治体を含め地方には、受け入れ態勢が十分でない。

 

 食通の外国人旅行客の需要と、それを満たすだけの良質な食材があっても、発信力不足で広められない地方。そこで、両者をマッチングさせ、日本の食文化の潜在力を掘り起こそうとさまざまなサービスを打ち出す会社シェアプロがいま、注目を浴びている。そのサービスや実績、代表取締役CEOである岸伸久氏の今後のビジョンに迫る。

 

築地クッキング(Tsukiji Cooking

~築地場外市場の新鮮な食材を厳選したインバウンド向けの料理体験~

 

 「築地クッキング(Tsukiji Cooking)」は、外国人旅行客の想いに応える形で5年前に開始したシェアプロが提供するサービスの一つ。海産物をはじめ全国の新鮮で良質な食材が集まる築地場外市場をロケーションにし、日本の伝統的な和食を体験してもらうインバウンド向けのプログラムだ。メニューは多岐にわたり、お寿司から、肉じゃがなどの私たちの普段の食卓に並ぶような家庭料理もある。帰国後も、自宅でも同じ料理を作れるようにと、産地、旬、自国で作る際の代替の食材から調味料も含めて紹介しているのが、非常に実践的といえる。

 

また、フーディーズの日本文化への探求心を満たすために、食材の由来に関して、料理指導をする先生が一から丁寧に教えてくれるのも特徴的だ。例えば、元旦で食べる伝統料理のおせちを挙げてみよう。黒豆は、「まめに暮らす」「まめに働く」などの意味があるが、現代に生きる私たちは、気にせず食しているのではないだろうか。海外のフーディーズは、そんな日本人がおろそかにしがちな風習、文化へも興味を示すのだ。

 

 料理のメニューの選定は、自由度の高いカスタマイゼーションを意識している。フーディーズのような富裕層は、特別で唯一無二の経験を求めているため、よりオリジナリティ溢れるカスタマイズしたプログラムを好む。ベジタリアン、宗教上の制約で食べられないものがある人、健康を意識してグルテンフリーを好む人など、さまざまな理由で食の制限がある人は大勢いる。そのため、例えば、照り焼きを使ったメニューをつくる場合は、ベジタリアンの人用に厚揚げを代用するなど、一人ひとりの趣向に合わせたメニューのカスタマイゼーションを重要視しているのだ。

 

 サービス開始から5年がたち、客層の変化が顕著だ。元々は欧米の外国人旅行客が多数を占めていたが、最近では香港やシンガポールなどアジアの割合も高まっている。リピーターもいるが、ほとんどが口コミにより広まっている。実際に参加した外国人旅行客が帰国後、同じく食に興味を持つコミュニティへと積極的に発信しているようだ。

 

 サービスの秘訣は、食材と料理指導をする先生だ。食材は、もちろんロケーションでもある築地場外市場から直接仕入れた、鮮度ある良質で旬な食材が売りだ。生産地も明確で、上質なものを食べられるとフーディーズからは好評だ。

 

また、先生に関しては、全国3,000もある個人料理利教室のネットワークの中から、エンタメ性があり英語が堪能で、一人ひとりに目が行き届く心配りのある先生を厳選して誘致している。元々、日本の消費者は食に対して厳しい審美眼を持っていることに加え、さらに食材への知見がより深い料理教室の生徒たちをひきいる日本の先生は食へのこだわりに余念がない。

 

チームビルディング・クッキング

~大手グローバル企業が活用する最新の研修スタイル~

 

 築地クッキング(Tsukiji Cooking)が発展し、企業向けサービスとして誕生したのが「チームビルディング・クッキング」。企業の社内向け研修として、またはコミュニケーション活性化の福利厚生の一種として提供されているものだ。これまでにチームビルディングの利用実績がある企業は、付加価値を訴求する大手外資系ラグジュアリーブランド、アパレルやグローバルなIT企業、国内大手自動車メーカー、国内大手化粧品メーカーなど、枚挙にいとまがない。世界的に名高い大手企業がこぞって利用しているという、気になるそのプログラムとは何だろうか。

 

 

 サービス内容は、社員同士がいくつかのグループを組み、料理対決をするという、いわゆるチームで楽しみつつ競争するコンペ形式の研修だ。具体的には、まずは、制限時間内に、決められた予算内で築地場外市場で買い出し、調理、盛り付けなど、グループで相談しながらすべてを効率よく進める。そして、最後にできあがった料理のプレゼンを経て、総合的に一番優れたチームの料理を決めるというものだ。チームワークや計画性、競争心、ひいてはリーダーシップなど、普段の業務に欠かせない能力が楽しみながら培われるため、まさに研修に打ってつけの内容といえる。

 

「チームの行動によりカラーが色濃く出るので、非常に面白いですよ。例えば、外国人の方が多く占めるグループでは、とにかく行動が迅速です。日本人チームでは、買い出しに行く前に『何を買うか、どこで買うか、予算は足りるか』など細かく計画を立てるので、なかなか買い出しに出かけません。ですが外国人チームは、スタートした瞬間すぐに、買い出しへと市場へ出かけるなど、まずはアクションを起こすという傾向にあります。一方、日本人チームは、時間はかかるものの、ひとつひとつ丁寧で綺麗に仕事をし、スタッフにまで配慮をして頂けます。どちらがいいとは一概には言えませんが、やはりコンペ形式にすることで、グループの長所や伸ばしていくべき能力、そしてどうお互い補完し合えるかなどが、はっきりと見えてくるのではないでしょうか。」と、シェアプロの岸伸久代表取締役は語る。

 

 同社は、ただ研修の場を提供しているだけではなく、コンサルティング機能も果たしている。料理のメニューや進行企画を組み立てる前に、「まずは企業の持つ課題点、問題意識、研修を通して社員に何を身につけさせたいのか」を、必ずヒアリングをするようにしているのだ。プログラム全体でカスタマイゼーションを大事にしているのは、築地クッキング(Tsukiji Cooking)と同様だ。また、参加人数は、数十人から数百人程度と会社によりばらつきがあるほか、場所の指定も社内の会議室やホテル会場など、各社で条件が異なる。そのような場合には、火をつかわず調理場をとらない料理や、比較的スペースがとれる際には実習的なメニューのバリエーションも同社が提案している。

 

チームビルディング・クッキングの料理作品例

 「これまでは、よくグローバル企業にご利用いただいていたのですが、最近では、国内企業からの要望も増えているんです。国内とはいえ、外国人の社員はもはや珍しくはないため、多様化する人材に向けたアプローチが急速に求められているのでしょう。『築地クッキング(Tsukiji Cooking)』や『チームビルディング・クッキング』のサービスを経て、最近では、生産地である地方の食材への関心が高まっていることを切に感じます。また、地方からも我が社の食への取り組みに関心を持っている方が大勢いるとの声を聞き、私自身、地方の生産者と直接連携し、旬にあったプレミアムな食材を提供するなど新しい取り組みができるのではと思っています」と岸氏は語る。

 

地方の生産者から食材をストーリー仕立てで発信

~キュリナリーツアーを通じて~

 地方に関心を向けたシェアプロが、まず目を付けたのが、欧米諸国の観光先進国で人気を集めているキュリナリーツアーだ。これは、世界各国の地方の食材、それにまつわる食文化の探求を求めて、現地で食体験をするというものだ。同社はそれを日本に取り入れ、国内外の旅行代理店と提携して、また自社での直接のプロモーションも含、食を目的とした海外向けの旅行プログラムに乗り出した。

 

同社が特に強調するポイントは、食の背景にある各地域の文化や、歴史、そして地方ならではの豊かな自然である。本来は地方の側から戦略を仕掛けてPRを打って出ていく必要があるものだが、地方の自治体は、インバウンド向けのPRになかなか意識が向いていない。たとえ関心があったとしても、前例がないため、戦略に頭を悩ませているという現状だ。

 

 「地方は、独自の名産品、有する自然の価値にもっとプライドを持つべきだと思います。PRはまだまだ内需向けで消極的。『いいものさえ作れば来てもらえる』という考えが根付いているのかもしれません。もっと地方が上手に発信するお手伝いができれば、それこそまさに日本創生にもつながるのではと信じています」と岸氏。

 

 反響が大きかったプロジェクトは、同社が農林水産省や全国の味噌メーカーが加入する全国味噌工業協同組合連合会と連携して作成した調味料の“みそ”を紹介する英語版パンフレットと映像だ。同社は、実際に“みそ”生産地へと足を運んだが、生産者の多くは地域の零細・中小企業ばかりで、海外へのPRへ、時間やコスト割く時間がない様子を目の当たりにした。ただ、どの生産者も手作りで作っており、その味わいも上質であるため、まさに地域が誇る名産品だと胸を張れるレベルの仕上がりである。「せっかくの良いものが、広まらないのはもったいない」という想いを元に、同社をはじめに各団体が手を組んで、海外のバイヤーやプロフェッショナルに直接訴える仕掛けを通じ日本創生や日本文化の普及へと乗り出したのだ。

 

海外のバイヤー向け、万能調味料“みそ”のパンフレット

“みそ”のパンフレットの用途は、海外のバイヤーに売り込む際に、教科書として“みそ”を海外の人に説明する一助として使うというもの。日本の代表料理としての“みそ汁”ではなく、万能調味料としての“みそ”と売り出すことで、さまざまな海外料理に合わせた用途へと広がることが期待される。例えば、お菓子の聖地、フランスでは、“みそ”を使ったマカロンがつくられるなど、日本の食材の可能性はますます広がっているようだ。

 パンフレットの中身は、“みそ”の歴史や、日本各地で異なる白みそ、赤みそなどの細かな分類など、多岐に渡る。他にも生産の工程、料理における使用法など、日本人でも知らない“みそ”にまつわるトリビアが満載だ。

 

 「日本の食材を広めることで、日本のことを知ってもらう。そして、実際に生産地である地方へ来てもらう。まさにいいことづくしです。是非、価格競争にならない付加価値を訴えていきたい。しかし、我が社はこれだけでは終わりません。今度は、例えば生産地で召し上がった方が国に帰って輸入できる仕組み作りというアウトバウンド(輸出)にも連携できるのではないかと、新たな構想が広がっているんです。」と岸氏は胸を張る。

 

インバウンドとアウトバウンドの連携

~台湾政府との連携で名産品バナナを通じた交流~

 

 2019年1月8日、三重県志摩市の志摩市立東海小学校でバナナの贈呈式が行われた。これは、台湾政府が日本市場に向けた、名産の台湾バナナのPRに乗り出す仕掛けの一環だ。舞台となったのは、G7伊勢志摩サミットで海外から注目を集めた三重県志摩市。日本のバナナとの味の違いをリアルに感じてもらうために、台湾政府の関係者が小学校へと来日し、台湾バナナの贈呈を通じて、日台交流を図った。実は、台湾政府と志摩市の自治体との橋渡しとなったのはシェアプロ。その狙いは一体何だろうか。

台湾政府と三重県小学校のバナナを通じての日台交流

 

 「実際にバナナを食べてもらうことで、子どもたちには“美味しさ”の記憶が残ります。そして、家に帰ってきっとお父さんやお母さんなどに話すでしょう。そうすることで、実際に生産元である台湾へ足を運んでくれる可能性もあります。一方、台湾国内でメディア報道がされますので志摩市や市の海産物の認知度が高まり、結果として関心を持った台湾の方々が旅行に行くかと思われます。今後日本も同じようにアプローチを仕掛ければ、その逆もありえるのです。まさに、皆さん喜び、その結果として長期的にお互いの収益化を狙ったwin-winの関係が築けるでしょう」と岸氏。

 

 最近では、中国をはじめとしたアジアの富裕層も急速に増え、フーディーズの動向がますます活発になりつつある。シェアプロも、メインターゲット層である欧米だけではなく、未来を見据えてアジアのフーディーズも取り込もうと先手を打っているようだ。「台湾をはじめとするアジア各国と日本の各自治体や生産者との、相互互恵関係で発展し、日本創生を実現します。是非、想いのある方々とさらに連携したいと思います。」と岸氏。

 

 日本の食材を通じたインバウンドビジネス、地方の生産元のPR活動を通じた地方の活性化支援、アジアをターゲットにしたアウトバウンドへの仕掛けなど、シェアプロは、食を通じてさまざまなビジネス展開を打ち出していくことだろう。

 

プロフィール:

株式会社 シェアプロ 岸伸久 代表取締役 CEO

学習院にて初等科から大学まで学び、法学部政治学科を卒業(学士)、ハーバード大学大学院にて日米関係、米国・アジア関係論をエズラ・ヴォーゲル教授、スティーブン・ヴォーゲル教授の下で学び、同教授の推薦で、ジョンズホプキンズ高等国際問題研究所にて国際関係論、国際経済、アジア研究(修士)を学ぶ。ゴールドマン・サックス証券投資銀行部門にて、企業の統合、経営戦略立案、海外展開などアドバイザリー業務を担当。スイスIMDビジネススクールで学び(Program for Executive Development)、2002年に岸・アンド・アソシエーツを起業し、日系・グローバル企業の経営戦略立案、海外展開、マーケテイング・コミュニケーションに関するアドバイザリー業務を担当。ネスレ、メルセデス・ベンツ、BMW、日立製作所、日立グループ、日本IBM、電通、味の素、キューピー、三菱商事、P&G, 白鶴酒造、LVMHなど国内外の企業のコンサルティング業務を担当。また、日系・外資系企業の経営者を対象としたディスカッション形式のフォーラム、会員制クラブ「ファースト・ウェンズデー」を2003年5月より主宰し、毎月1回執り行い今年17年目を迎える。日本企業、メディアなど限られたマネジメントが本音で学び合う会と評価され、Wall Street Journal紙がメディア・パートナーシップを締結している。

ネスレ会長兼CEO、ヘルムート・マウハー氏著書の「マネジメント・バイブル」をプロデュ―ス・翻訳。同書は、経団連の次世代マネジメントプログラムにてテキストとして活用される。 マーケティング誌、宣伝会議で、「グローバル企業のトップマーケッター」のコラムでトップインタビューを基に執筆(2003-2009)、学習院大学経済学部非常勤講師(2010-2015)、BS-TBS番組審議委員(2011-2016)を務めた。

2016年よりシェアプロCEO。シェアプロ社では、インバウンド旅行者およびMICEで訪日する外国人の嗜好に関するデータベースを、築地クッキングを通じて保有する。また国内では3000人の料理家および料理研究家(インフルエンサー)のデータベースを持ち、食に関する情報・市場性・食べ方・パッケージ・価格に関しての分析をネットワークによって実施している。パナソニック、ネスレ等の食料品メーカーおよび調理家電メーカーの自社製品への有効なチャネル戦略・マーケティング・販売サポートなどの実績を持つ。

 

日本へのインバウンドMice(Meeting, Incentive Tour, Convention/Conference, Exhibition/event)対応へ「食」を含めたTeam buildingプログラムを提供。各自治体などへ日本創生に関するアドバイザリー業務を提供。農水省、全国味噌工業協同組合連合、全日本カレー工業協同組合など、日本食、食文化の海外輸出のためのアドバイザリー、コミュニケーション・マーケテイング業務を提供している。会員:Harvard Club of New York City、日本外国特派員協会、日本マレーシア倶楽部、国際文化会館など。